pokepasta OC

wants_love_gold


Japanese

16歳、高校2年の4月、私は大病を患った。

私がかかった病は指定難病。いつこの白い壁の部屋から出れるか分からない。
搬送されてから数ヶ月、ずっと同じ景色を見ていた。

アルバイトでお金を貯めて、ポケモンハートゴールドを買おうと思っていた。
高校にはもちろん行けない。まぁ、友達もいなかったし、先生も苦手だから、行っても行かなくても一緒だろうけど…

大好きなポケモンが出来ないのが悔しかった。
家にはポケモンの人形があって、ゲームだって何回も遊んだ。
クリアしたらまた一から遊ぶということを繰り返していた。
アニメだって毎回見ている。

けど…今は本当につまらない。

ある日のことだった。以前より身体が楽になり、動けるようになったと

私の母が、なんとネットでポケモンハートゴールドを買ったというのだ。
中古だが、それでもいい。私がずっと遊びたかったものだ。
つまらないベッド生活もおさらばだ。
負担のかからない程度で、休憩をはさみながら遊ぶようにと言われた。
本当は1日やりたいが、ぐっとこらえて母の注意を受け入れた。

プレイヤーはおんなのこ。名前は「あやか」。
久しぶりのポケモンに、私は興奮していた。
効果音だけでもワクワクした。

ポケモンをプレイしていると、自然と身体も楽になってきた。精神的なものだろうか。
そんな私を見て、母も安心していた。

プレイ出来ただけ嬉しかった。
ゆっくりと時間をかけて、全クリまで進めていった。


1ヶ月後、不可解なことが起こった。

いつものようにポケモンを起動し、前回セーブしたところから進めようとした。

しかし、ゲーム内のプレイヤーの目の前に、ヒビキらしき姿がいた。
しかしバグっているようで、ピンクっぽいノイズがかかっている。
足も途中で消えていて、まるで幽霊のようだった。

私は十字キーの下を押し、その不気味なヒビキから離れた。
しかしそのプレイヤーは、私を追いかけてきた。

どれだけ離れても、別の場所に行っても、バトルを始めてもいる。
ハートゴールドにこんな要素は無いはず…!

ピンクのノイズがずっとうねうねとしていて不気味だった。

再起動すれば…そう思った時


ね      ぁ
    ぇ       
        そ     
   ぼ      ?  ?

「ひっ!!」
メッセージウィンドウが勝手に開き、ピンクのヒビキがそう言った。
文字はバグっていて、ギリギリ読めるぐらい。
ブツブツとノイズがDSから聞こえた。

私はDSをバタンと閉じた。

ポケモンは大好きだけど、こんなの聞いてないしさすがに怖い。
あのヒビキみたいな子はなんなの?

その日は怖くてなかなか眠れず、ポケモンも数日間プレイしなかった。

都市伝説はよくネット掲示板で見るけど、本当にこんなことが起こるなんて…
「あそぼ」なんて、本格的じゃん…(?)

しかし、気になることもある。このハートゴールドは中古だ。もしかすると、売った人が改造をして仕込んだのかもしれない。

私は母に、どんな人がそのゲームを売ったのか聞いてみることにした。

母は家で、ゲームが送られてきた時の、梱包に書かれていた送り主の名前を写真に撮り、私に見せてくれた。
名前からして、男性のようだった。

まぁ、名前だけ知っても何も分からないけど。
でもその数日後、その男が何者か知る出来事が起きた。

朝、母がニュースを見ていると、ある事件で男の名前が出たというのだ。
それが、死体遺棄だ。
遺棄されたのは5歳の子供で、その男の息子だったというのだ。
虐待で殺し、山に埋めていたらしい。
母親は子供を生んでしばらくして家を出ていったそうだ。

私はとんでもない犯罪者が所有していたゲームを手にしていたのだ。

でも、これとゲームの中のあのバグったトレーナーに関連性はあるのだろうか。
本当に改造が好きだった?いたずらだった?

私は久しぶりにゲームを起動することした。
診察などが終わった夜…

やはり、あのヒビキがいた。

ピンクのノイズがうねうねしている。
なんとかしてこのトレーナーに聞けないだろうか。あの事件と関連があるのか。
まぁ、たかがゲームのキャラクターに聞いたって無駄だろうけど。
所詮、二次元の世界。

「あなた誰なの」

そう思いながらも、私はゲームの人物に小さく声を出してそう聞いた。
周りから見れば、なにしてんだこいつってなりそう。

けど

ご るど   g ど
  る   r   D d

メッセージウィンドウにそう表示された。
まさか…伝わってるの?
嘘でしょ?

「誰なの?」

まさかと思いながら、もう一度声に出してみた。

ご ー る  ど

「ごーるど…?」

ゴールド?ポケモン金銀の?
これが…このトレーナーの名前?
あなた、意志があるの?

「どうしてゴールドなの」

ちょっと面白くなってきた。
いろいろ聞いてみようか。
それに、事件のことも気になるし。
ゲームキャラでも、何か知ってるかもしれない。

か っ k ぃ  い も n n

「え?かっこいいから?」

クスッと笑ってしまった。
こいつ、意外とかわいいな?

でも私が本当に知りたいのは…

「あなた…虐待されていた?」

… た tた かr  れ て ずっtt と
ぃた k った 
dでも  げーm の なか なra
じ  ゅぅ  だm も ん

……なんとなく、想像してた。
虐待死した子じゃないかと。
幼い口調、それに彼の表示も、少し小さい気がする。
私の操作しているプレイヤーよりも小さい。

多分、ヒビキのデータに入り込んだのかもしれない。
幽霊か何かが、きっと。

そうか…

「私も辛いんだ、ゴールドと違ってずっと病院の中にいるの…病気が治る気がしないよ。」

なにゲームキャラにこんなこと話してんだか。親の前なら絶対出来ない。お医者さんならもっと心配されちゃうよ。
でも、なんか落ち着く。

ね ぇ… ぃつ  ねr る ?

いつ寝る?うーん…

「親もいないし…ご飯も食べたし…眠いな…副作用で……」

ぉ はnなs しし ょ  

おはなし?してるじゃない?
寝たら何かあるの?

「……もう寝るけど…」

D でぃー ぇss す で ん、ge  げん
けさ ずn に ねt て

「え、うん…」

なんだ…急に…
電源を消さずにか…

言われた通り、電源を付けたまま、DSを閉じて寝ることにした。
なんだか不思議な夜だった…

でも、ゴールドにとっては、楽しいのかな…

両親は仕事ばっかで、友達もいない
兄弟もいないし

お母さんはよく会いにくるけど、忙しくてすぐ帰っちゃうし

正直…楽しく話せる人がほしい


「ねぇね」

身体が重い

「ねぇね~」

ずっしりと何か乗っかってるような

「ね~~ね」

顔になんかぷにぷにしたのが
……え?

「ねぇね」
「わぁああぁあああああああ!?!?!?」

!?!?!?誰誰誰誰誰誰!?!?
ピンクの目の…男の子…ヒビキみたいな髪型…!!?
何何何何何何!?!?
ほっぺ触られたし!!!

「誰ぇ!?!?どこの子!?!?」
「ごーるど」

……ごーるど?

「ごーるど、だよ、ここの」

彼が指差したのはDSだった。

「………へ?」
まさか、ゲームから出てきたってこと!?

「ねぇね、あやかでしょ?」

私の操作してるプレイヤーの名前だ。
じゃあ本当に出てきたんだ…
言われてみれば、服の色や、足が消えているのも同じだ。

けど今ゲームから飛び出した彼は、かわいらしい無垢な子供という感じだった。
私のほっぺに触れた手はとても小さかった。

ゲームでは見にくかったが、顔と右手にはガーゼが貼ってあった。虐待でよく叩かれてたのだろうか。

「どうして現実にまで…」
「あやかねぇねと はなしたいから」
「話したい…だけ?」
「さびしいもん」

そりゃそうか、虐待された過去があったのだから。
けどね、ゴールド

「ずっと乗っかってると重たい(( ;゚Д゚))」
「おきないの?」
「病気だもん、すぐには起きれない」

と思い、身体を起こそうとした。
すると、すんなり起きることが出来た。
背中はピンとしていて、きっちり座ることが出来ている。
身体が軽い。気持ち悪くない!

「あれ…?」

ずっと寝たきりだと思ってたのに…
身体が回復したから?気持ちの問題?
それか、彼の力なのか…

ゴールドは足が消えてるから、ベッドにちょこんと人形みたいに座っていた。
パーカーが萌え袖みたいになっている。
長すぎて余り袖になってる。

「ねぇね、ぼく もうこわくない?」
「え、うん…」

最初の破壊力は凄かったけど、今はもう大丈夫かな。
って……何……!?

「へっ……!?///」

…抱きしめられた。
笑ってるし。
けどうとうとしてる。眠いのかな。

なんだかとても心が落ち着いた。
悩みやストレスが吹き飛んだ気がした。

…かわいい

この子とは分かりあえる気がする。
ずっとこうしていたい…

眠った彼の頭を撫でた。
私もなんだか眠くなってきた。


「……ん」
目を開けると、窓からの日差しが私の目に入ってきた。
そしてゴールドはいなくなっていた。
軽かった身体が一気に重たくなった。
いつものように気持ち悪いし、起き上がれない。

夢だったんだ。

でも、私はこの夢を鮮明に覚えていた。
交わした言葉、私とゴールドの動き

私はゲームを開いた。

あの子がいた。
消えたか心配になったよ…

ゴールドはしっかり、プレイヤーの後ろに付いて来ていた。

「おはよう」

お はよ う

メッセージは前よりも読みやすくなっていた。
多分、ゴールドにも夢の中の記憶は残っているのだろう。

私とゴールドの不思議な関係が始まった。

図鑑コンプがてら、私はゴールドといろんなマップを探索していた。

バトル中ゴールドはなんにもしないけど、それでも一緒に旅をするのは楽しかった。

「ねぇ、ゴールドはどうして私の夢にまで現れたの?」

十字キーを使い、ゴールドと目線を合わせてそう聞いた。
10秒ぐらい間があった。
そして彼から返答が帰ってきた。

あいしてほしいから

初めてバグの無いメッセージが送られてきた。
彼の背景を考えると、「そうだよなぁ」となる。

ああ…どれだけ辛かったんだろう、この子は…

どれだけ…


「おきて、ねーね」
「ん…」

寝落ちしてたみたいだ。
で…ここは夢の中…か。
明晰夢みたいなものなのかな。

「ゴールド…私最初、ただのゲームキャラって君を見てたけど、そうじゃないよね、今は自由で、意思もあって…ちょっとバグってるけど、でも…」

小さな手を握った。

「愛して、あげるからね」
「…うん」

正直彼に尽くせるかどうか分からない。夢の中では自由でも、現実がどうか。
病気はいつか悪化するだろうし、ゲームをする暇も無いかもしれない。
そうなったら彼も、いずれ消えてしまいそうな気がする。
それに手術もある。

「ねぇねやさしいからすき」
「優しい…のかな…」

なんだか照れる…

「私、今度手術受けるの。結構難しいんだけどね。それまでにハートゴールドやり尽くしててさ。」
「しうつ(手術)、せいこうしたらいいね」
「うん…」

ポケモン…色違いも……全部集めたい…ゴールドと一緒に


そして手術の日がやってきた。
数日間、ポケモンは出来なかった。
難しい手術だから、成功するか分からない。

麻酔で眠っている間見た夢

私たちはポケモンの世界にいた。
ピカチュウもヒノアラシもみんないて
もちろんあの子もいて
私はトレーナーの格好をしていた。

でも、私は時々ダメージを受ける。

「ねぇね?」
「だ、大丈夫、これぐらい!」

心臓の奥が痛くなるんだ。
でも、現実よりたいしたことはなかった。

ポケモンの世界はとても楽しいものだった。
ゴールドもだんだん弟みたいに思えてきた。
小さな手を握って、一緒に冒険した。

でも、心臓の痛みがだんだん強くなってきた。

「ねぇね!!」
「う……」
「かいふく、かいふく!!」

ゴールドが私を抱きしめている。

耳鳴りがする。
ピーっという音が、耳の中でずっと鳴っている。

けど

「………あれ」

痛くない…身体が軽くなってる?

「……だいじょうぶ?」
「うん、何でか知らないけど、凄く元気になった!」
「……!よかったぁ!」

良かった、死ぬかと思った…

「ゴールド、一緒に色違い探そ?」
「うん!」

病気で苦しかったけど、ゴールドと一緒に冒険が出来て良かった。

「……ねぇね、もどらなくてよかったの?」


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